第1章 出会い
………………。
……何言ってんの……?
唯はポカンとした表情でこちらを指差すジンの指先を見つめる。
意味がわからない。
何? ……私が、『ジパングの宝』……?
「……な、何それ!? 私は物じゃないわよ!」
やっと出てきた言葉は、少し論点がずれていたかもしれない……。
「そんなことはわかってる」
「なら、どういうことよ!」
「じゃぁ、唯は『ジパングの宝』はなんだと思っていたんだ?」
逆にそう質問されてウっと詰まる。
「し、知らないわよ。だからずっと探していたんだもの」
「オレたち、ちゃんと調査したんだよな、ジン」
キールに言われてジンが頷く。
「調査?」
「そう。初めて唯ちゃんと会った町で『ジパングの宝』のことを訊きまわったんだ」
「皆言うことは一緒。それがどんな物かなんて知らないし、興味もない、ってさ」
唯は二人の話を黙って聞いていた。
ジンが続ける。
「でもその後に皆揃ってこう付け加えた。……私たちにとっての宝は、あるひとりの女の子だ。その子は義賊で、いつも貧しい私たちの生活を支えてくれている……」
唯は目を見開く。
「……だから、私達ジパングの民にとっての宝は、その義賊の女の子だ。ってさ」
「君の事だろ? 唯ちゃん」
キールがにっこりと言う。
「……みんなが?」
声が震える。
「そう。みんな君にすごく感謝していたよ」
……どうしよう……。
すごく……胸が熱い。
じんわりと、あったかい気持ちが心いっぱいに満ちていく。
皆がそんなふうに思っていてくれてたなんて、考えもしなかった。
……こんなに幸せを感じることは、生れて初めてのことだった。
「これでわかったろ? 君がこのジパングの宝だってことが」
ジンに言われてはハっとする。
「で、でも、どうしよう……私、お宝を見つけたら、お金にして、またみんなに配るつもりだったのに……早く他のものを何か盗まなきゃ、みんながまた困っちゃう」
みんなが喜んでくれていると知ったからこそ、自然その期待に応えたいという気持ちも大きくなった。