第1章 出会い
唯が俯いて悩んでいるとキールが言った。
「そういやジン、さっきあいつが言ってたこの城で一番大きな宝石ってやつ、さっき頂戴した、アレのことか?」
「かもな」
「え……?」
ジンがコートのポケットを探る。
そこから出てきたのは今まで唯が見たことも無いくらい大きな宝石だった。
「これ売ったら、とりあえず一家族が一年は遊んで暮らせるんじゃないか?」
言って、ジンはその宝石を唯に投げてよこした。
慌てて唯はそれを両手で受け取る。
「え? ……これ、もらっちゃっていいの?」
唯が言うと、ジンとキールはにっと笑った。
「あ……ありがとう」
唯はとりあえずお礼を言う。だが同時に、かなり拍子抜けしていた。
さっきまで『絶対に負けない!』とか熱くなっていた自分は一体……。
王ドロボウって、もしかして……すごくイイ奴……?
そう思った、その時だった。
ゴゴゴゴゴっ
頭上から地響きのような低い音が聞こえてきた。
びっくりして振り仰ぐと城から突き出た大砲がこちらに向けられていた。
「王ドロボウの伝説もこれまでじゃあぁぁ!!」
そこから覗いた城主が勝ち誇った声を上げる。
「うそっ!?」
唯は真っ青になって声を上げる。
「キール!!」
「おぅ!!」
ジンが叫び、キールは羽を広げてジンの腕に降り立った。
いや、ただ降り立ったのではない。
キールの体がじょじょに変形していき、ジンの腕に絡みついていく。
「死ねえぇぇぇ~~い!!」
ドンッ!!
そして、轟音を立てて大砲が発射された!
唯は逃げることも忘れて咄嗟に目を瞑る。
同時、ジンが叫んだ。
「キィーール……ロワイヤル!!」
瞬間、キールの口からまぶしい光が放たれた。