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【JING】君はオレの宝物。

第1章 出会い



「――お、下ろして! もう大丈夫だからっ」


 城から出てすぐに唯が言う。

 ジンは城をぐるっと囲む堀に掛かった橋の上に静かに下ろしてくれた。

 ちなみに城門の前にはふたりの警備兵が重なってダウンしていた。


「唯ちゃん、助けに行くのが遅くなってごめんよ。うわっ! 手首に痣ができているじゃないか!!」


 キールに言われて見ると、確かに縛られた跡がくっきりと残っていた。


「あのやろう! ジン! やっぱり戻ってキールロワイヤルぶっ放してやろうぜ!!」

「このくらい平気よ」


 唯は手首をぶらぶらと動かしながら言う。

 そんなこと全く気にならなかった。それよりも……。


「で、王ドロボウさん。一体何を盗んだわけ?さっきあなた『ジパングの宝は頂いた』って言ってたわよね」

「あぁ。頂いたさ」


 唯は迷ったが思い切って言う。


「悪いけど、それ譲ってくれないかしら。私にはそれがどうしても必要なの」


 真剣に尋ねると、ジンは目を瞑って小さく笑った。


「君には無理だよ」

「っ!? ……なら、無理やりにでも頂くわ!」


 唯はカっとなって続ける。


「あんたみたいに道楽で泥棒やってるヤツになんて、絶対に渡したくないのよ!」


 そうだ。さっきは不覚にもこんなやつにドキドキしてしまったけれど、やっぱり――。

『王ドロボウ』になんて、絶対に負けたくない!

 睨みつける唯を、ジンはまっすぐに見つめ返して言った。


「だって君が君自身を盗むなんて出来ないだろ?」

「……は?」

「『ジパングの宝』は、君だよ」

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