第1章 出会い
なぜか、唯の胸はドキドキしていた。
「キール、そのじいさんがなんかしないように見張ってろよ」
「ずるいぞジン! 唯ちゃんを助けんのはこのオレだぁ~!!」
「言ったろキール。このお宝はオレのもの」
そんな会話を半ば放心したように聞いている唯。
(……お宝?)
「足枷の鍵は……これかな」
ジンはそう言いながら足枷と手首の縄を手早く外してくれた。
「あ、ありがとう」
言うとジンは唯に向かってニっと笑った。
「立てる?」
「う、うん」
頷いて立ち上がろうとしたが、先ほどの薬のせいか少しふらついてしまった。
「っと」
そんな唯をジンは軽く支えてくれた。
「ありがと……きゃっ」
お礼の言葉はすぐに悲鳴に変わった。
いきなりジンが唯の身体を抱き上げたのだ。
「こらぁ~! ジン! レディにいきなり何してんだ~!!」
唯が何か言うより先にキールのブーイングが入る。
そのままジンは唯を抱えたまま牢屋を出た。
(な、なっ……何これ~~!?)
唯は真っ赤になってジンの顔を見上げる。
するとジンとばっちり目が合ってしまった。
……ドキンっ
不覚にも心臓が大きく跳ねた。
そういえば、昼間初めて会ったときも目が合って酷く動揺したことを思い出す。
でも今のジンは昼間の突き刺すような視線とは違い、とても優しい目をしていた。
それでもやっぱり落ち着かなくて唯は目をそらす。
「んじゃな、じいさん。予告通り、ジパングのお宝はいただいたぜ!」
城主に言いながらジンは階段に足を掛けた。
わけがわからないといった顔で、城主はそのまま階段を上っていく王ドロボウを見送った。