第1章 出会い
「何事じゃ!?」
城主が慌てて階段の方を振り向く。
唯のいる牢屋の両端に立っていた警備兵がサっと城主の前に出る。
階段の所にいた警備兵が慎重に上っていく。
だが、姿が見えなくなってすぐにその警備兵の悲鳴が聞こえ、そのまま下まで落ちてきた。
唯は視線を落とし、ただその音だけを遠く聞いていた。
目の前の変事など、どうでも良かった。
お宝が存在しなかった。唯はその事実から立ち直れないでいた……。
そんな中、誰かがゆっくりと階段を降りてくる。
「何者だ!」
残った二人の警備兵が槍を階段に向け緊張した声を上げる。
すると、すぐに声が返ってきた。
「キール。ちゃんと予告状出したか?」
「あぁ。確かにあのじぃさんの頭に落としてやったぜ」
緊張感の無い会話。
そして、なぜかとても聞き覚えのある、声……。
(……キール?)
唯はゆっくりと顏を上げ、階段を見つめる。
そして、侵入者の全貌が明らかになった。
「……っ!?」
「囚われのお嬢さん! このキールめが助けに来ましたよ~!」
驚き過ぎで何も言えない唯に向かって投げキッスを飛ばしてきたのは、バンダナを着けた愛嬌のある黒い鳥くん。
そして不敵な笑みを浮かべたツンツン頭の少年。
――そう、昼間会ったヘンテコなコンビだった。
なんでこの二人がここに……!?
「お、お前は……!」
その時、城主が震える腕でキールを指差す。
「予告状を落としていきおった鳥!」
「!?」
唯は城主の言葉にはっとなる。
(予告状って、まさか……!?)
『王ドロボウ!?』
不覚にも城主と声がハモってしまった。
ツンツン頭の少年が肯定するように唇の端を上げる。
(ウソっ! だって、あ、あんな私と同じくらいの男の子が、伝説の……王ドロボウ!?)
「予告通り、ジパングのお宝をいただきに来たぜ」
少年――王ドロボウが、城主に向かって言い放った。