第4章 君は大事な…
「ジン! ちょっ……退いて!」
「嫌だ」
「なっ……」
「言ったろ、独占欲強いって。唯ってキールが好きなのか?」
「え!? ち、違っ……キ、キールは仲間として好きだよ!」
「じゃぁなんで同じ仲間のオレには話せないんだ?」
「だ、だって! ジンは……」
「オレは?」
「好きな人だから!」
――い、言ってしまった……!
ジンはキョトンとした顔。
それが余計に羞恥心を煽って唯を慌てさせる。
「だっ……て、ジンは私のことすごく大事にしてくれるから!」
頭がパニックして自分でも何を言っているのかわからない。
「でも、ジンは私のこと“大事なお宝”だと思ってるから大事にしてくれてて、私のことが大事なわけじゃないんだって思ったら……すごく、辛くなっ……」
結局また涙が出てきてしまい続かなくなってしまった。
ジンが今、こんなに近くにいるのもきっと、“大事なお宝”だから……。
そう思うとまた喉の奥が苦しくなって……どうしようもなかった。
と、
「唯、オレ、そこまで器用じゃないぜ」
「……え?」
それはついさっきどこかで聞いたセリフ……。
唯はゆっくりと潤んだ目を開ける。
酷く優しい瞳がこちらを見下ろしていた。
ドキン……っ
思わず胸が鳴る。
「唯、オレは泥棒だけど、好きでもない子を盗んだり一緒に旅したりしないよ」
「……え?」
「初めて会ったときのこと覚えてる?」
「う、うん……私がジンにぶつかっちゃって……」
ジンはなんだか楽しそうだ。
唯はそんなジンを涙を溜めたまま見つめる。
「唯はそれが初めてだと思ってるだろ? ……違うよ」
「……え?」
「結構前からオレ達も“ジパングのお宝”を探して城に忍び込んでいたんだ。その時、一人でがんばってる唯を見つけた」
ジンがニっと笑って言う。
「その時にオレは唯を盗むと決めたんだ」
「……え?」
どういうこと? それって……。
「オレは唯をお宝だから大事にしているんじゃない。……唯を大事にしたいんだ」