第4章 君は大事な…
声が出ない。
驚きと、嬉しさで、身体が震える。
「なに? 唯はそれをキールに相談してたのか?」
そう言ってジンがおかしそうに笑う。
「あいつな、ずっと唯がオレのこと好きになるわけがないって言ってたんだ。オレの勝ちだな」
途端、思い出したようにボっと顔が熱くなる。
「……は、話したんだから! 退いて!!」
両腕でジンの胸を押す。
「イ・ヤ・だ」
「きゃっ!!」
その腕を引っ張られて少し浮いた唯の背中にジンの両腕が回る。
寝たまま、ジンに抱きしめられてしまった。
きゃあああぁぁ~~!!?
シーツ越しに掛かるジンの体重が、たまらなく恥ずかしかった。
「ジ、ジン! やだ、離してっ!」
暴れる唯にびくともせず、ジンが嬉しそうに言う。
「唯。オレのものだ」
そして更に強く抱きしめられる。
――頭がクラクラする。
だめだ。完璧に熱が上っている。
唯が抵抗を緩めたそのとき、部屋のドアが遠慮がちに開いた。
「唯ちゃん? ジン……っ!!?」
二人を見て一瞬固まるキール。
「キ、キール……」
「お、キール。どうだ、飯、美味かったろ?」
「ジ……ジ~~ンっ! お、お前っ、病人の唯ちゃんになんつーことしてんだ~!!」
キールが大声で怒鳴る。
「キール、声でかいぞ。近所迷惑。それに、まだ何もしてないし」
……ま、まだ!?
唯は驚いてジンを見上げる。
「バ、バカヤロ! 何かされてたまるかぁ~!」
「今日は唯病人だし、このくらいしか出来ないな」
そう言って、ジンがこちらに向き直る。
「? ジっ、んっ!」
唇に、冷たいものが当たった。