第4章 君は大事な…
「オレにとって、その子は一番の宝物なんです」
唯は目を瞑ったまま淡々と続けるジンを呆然と見つめる。
「……すごく、大事にしたいんです」
どうしよう……また涙出そう……。
これ以上聞きたくなくて、唯はまたぎゅっと目を瞑る。
――と、
「絶対に……手放したくない」
急に、ジンの声音が低くなった。
「他の誰にも渡したくない」
「……!?」
ゆっくりと目を開けて気付く。
いつのまにかジンは唯をまっすぐに見つめていた。
心臓が、止まってしまうかと思った。
……突き刺すような真剣な眼差し。
初めて出会ったときのことを思い出す。
怖いと感じたあの視線。
唯はその瞳に魅入られてしまったように目が離せなかった。
「最近、その子は何か悩みがあるみたいなんです」
ジンは唯を見つめながら続ける。
「なのに……オレには話してくれず、他の男に話して泣いていたりするんです」
え……?
唯は目を見開く。
「オレ、こんな職業なんで、独占欲人一倍強くて……他の男にその子の涙を見られたってだけで悔しくてたまらないんです。……どうしたらいいですか?」
そこで、ジンの悩み相談は終わりのようだった。
後はただ無言で唯をじっと見つめる。
唯はどう答えていいのかわからなかった。
ジンの言っている意味が……良くわからない。
『他の男』って……?
「え……えっと」
唯が何か言わなきゃと口を開けたそのとき、ベッドがギシリと鳴いた。
「!?」
視界が遮られて暗くなる。
ジンの瞳が間近にあって、唯は息をのむ。
唯の顔を挟むように、その両腕がすぐ耳元にあった。
「ジ……ジン!?」
慌てる唯。
この距離はマズイ。
顔が真っ赤なのは熱で誤魔化せるからいいけれど……、この壊れたような心臓の音は絶対に聞こえてしまう!!
「唯。キールに話せて、やっぱりオレには話せない?」
至近距離から降って来るジンの声。