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【JING】君はオレの宝物。

第1章 出会い



 そして夜。

 唯はいつものようになんとか場内に侵入していた。


(やっぱり、一番あやしいのは、一番警備が厳重な場所よね)


 誰も知らないというお宝。

 だがまさか城主が知らないわけがないだろう。

 きっと王ドロボウの予告状を受け取って、慌ててその場所を警戒しているはずと考えたのだ。


(大当たり!)


 天井裏から探っていると、やたらに警備兵が多い部屋を発見した。

 この時ばかりは予告状を城主に送った王ドロボウに感謝した。

 いつも以上に物々しく武装した警備兵の中心には小さな台座があった。

 そしてその台座の上に、キラリと光るもの。

 宝石……だろうか?

 ここからでは良く見えない。……でも。


(きっとあれだ……! とうとう見つけたわ!)


 唯の心は歓喜に打ち震えた。

 長年探してきたものが今、目の前にある。

 唯はその宝をどこか他の国で換金し、いつものように貧しい人々に配るつもりだった。

 きっと大金が手に入り人々の生活が大いに潤うだろうと、今まで根気良く探してきたのだ。

 それがやっと見つかった!

 ……だが、この厳重警備の中どうやって盗む……?

 唯は唇を噛む。

 ざっと見ても警備兵は10人はいる。

 さすがに10人いっぺんを相手する自信はなかった。

 ……獲物が目の前にあるのに手を出せない。

 いつもなら、一度退いて対策を考えるのだが……。


(そんな悠長なことしてらんない!)


 今回はいつもと違うのだ。

 王ドロボウに先を越されてしまうのは、絶対に嫌だった。


(そんな道楽で泥棒やってるヤツになんて、絶対に負けたくない!)


 その時、下の部屋に動きがあった。

 ひとりの警備兵が部屋に入って来て何かを伝えると、中の警備兵は揃って外に出て行ってしまったのだ。

 部屋には台座だけがポツンと残された。

 一体どうしたというのだろう……。


(なんにしろ、チャンスだわ!)


 慎重に天井板を取り外し、音を立てずに優雅に部屋に降りる唯。

 目の前の台座の上には赤ん坊の拳ほどの大きさの宝石が置かれていた。

 こんな大きな宝石、売ったら一体いくらになるだろう!

 唯は顔を緩ませながら、それに手を伸ばした。
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