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【JING】君はオレの宝物。

第1章 出会い



「大丈夫ですか、お嬢さん! お怪我は!?」


 と、その間に割って入ってきたのは赤いバンダナを首につけた、なんだか愛嬌のある黒い鳥。


「だ、大丈夫。ごめんなさい、ちょっと考え事をしていたの」

「いえ、こちらの不注意です。もし良かったらお詫びの印にお茶でもいかがですか?」


 その鳥くんが妙にキザったらしい言い方をするものだから、唯はつい笑ってしまった。


「俺はキール。笑顔の美しいお嬢さん。貴女のお名前は?」

「ふふ、わたしは唯よ。よろしくね、キール」


 言って唯が右手を差し出すと、キールは文字通り飛び上がってその手を取った。


「でもごめんね。ちょっとお茶する時間はないの」


 早く作戦を考えないといけないから……。


「また今度誘ってね」


 キールは可哀想なくらいがっかりして、そのまま下に落ちていった。

 それを見て唯がまた笑っていると、


「近いうちにまた会えるさ」


さっきぶつかってしまった男の子が初めて口を開いた。


(……え?)


 そちらに目線をやって驚く。

 その少年と思いっきり目が合ったのだ。

 てっきり、さっきのセリフはキールに言ったのものだと思っていたから。

 目つきが悪いわけでもないのに突き刺すような視線……。


(何……?)


 なんだか落ち着かなくて唯はすぐに目をそらした。


「そ、そうね。縁があったらまた会えるわ。じゃあね、キール」

「さよーならー」


 手を振りながら二人の横を通り過ぎていくと、キールはこちらを振り向いていつまでも手(?)を振っていた。

 その間、ツンツン頭の少年はこちらを振り向きさえしなかった……。



 ――何か、ヘンテコなコンビ……と、それより作戦作戦!

 そして唯はまた歩きながら今夜の作戦を練り始めたのだった。

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