第4章 君は大事な…
部屋の中を静寂が支配する。
またジンと二人きりになってしまった。
唯は心臓の音が早くなるのを感じた。……熱のせいではない。
と、いきなりジンの手が額に当てられてびっくりする。
「キールが変えてくれたばかりか」
「う、うん。ついさっき」
そのままジンは唯の前髪をさらりと撫でた。
ひゃ……っ
思わず声が出そうになる。
ジンはその仕草を何度か繰り返しながら口を開く。
「唯、最近……悩みあるだろ」
「え!?」
ギクリと身体を強張らせる唯。
「ここのところほとんど寝てなかったみたいだから……」
……気付かれていたんだ。
焦る。
「――ご、ごめんね。熱なんか出しちゃって。これからは体調管理しっかりするから」
唯は早口で言う。ジンの顔は見られなかった。
そんな唯を見てジンが優しく訊く。
「……オレには話せない悩み?」
その声にドキンと胸が鳴る。
ジンに……話せるわけがない。
もし話してしまったら……、
……きっと、この旅が終わってしまう……!
唯はぎゅっと目を瞑って言う。
「ごめん……」
「……そっか」
ジンが小さく頷いた。
これでいいんだ……。
唯はシーツの中でズキズキと痛む胸を強く押さえた。
「じゃぁ。唯オレの悩み、聞いてくれる?」
「え?」
突然の明るい声に驚いて唯は目を開きジンを見上げた。
「オレの悩み。聞いてくれる?」
もう一度繰り返すジン。
「う、うん」
唯は戸惑いつつ頷いた。
……ジンに、悩みなんてあるんだろうか……?
いつも自信満々というふうだからまるで想像がつかない。
と、ジンが目を瞑ってゆっくりと話しだした。
「実はオレ……気になる子がいるんです」
「……!?」
予想外の告白に頭が真っ白になる。
……ジンに……そんな人が……!?