第4章 君は大事な…
「ジ、ジンっ」
キールが慌てたように飛び上がる。
「……キール、なに唯泣かせてんだ!?」
つかつかとベッドまで早足で来て飛んでいるキールの首根っこを掴もうとするジン。
「バ、バカ野郎! オレが泣かせたわけじゃない!」
危ういところでそれをかわして、キールが怒鳴る。
「むしろお前が……」
「私が勝手に泣いただけなの! ごめんね、キール」
キールの言葉を遮って唯は言う。
あ、いや……と、キールは心配そうに涙を拭う唯を見下ろす。
ジンはそんなふたりを怪訝そうに見てから唯に訊いた。
「唯、そんなに辛いのか」
「ううん。身体は大分楽になったよ。ちょっと熱のせいで涙腺弱くなっちゃったみたいで」
苦笑しながら唯は言う。
だがジンは納得いかないように唯の寝ているベッドに腰を下ろした。
ギシリとベッドが揺れる。
どうしよう……。
こんなに泣いた後で、まともにジンの顔見れる自信ないよ……!
「キール、下行って飯食ってこいよ。ここの飯なかなかだぜ」
「お、おう!」
キールはちらちらと唯を振り返りながらドアの方に向かう。
だがふと立ち止り思い切ったように声を上げた。
「唯ちゃん!」
「?」
ジンの身体越しに唯はキールを見る。
すると。
「こいつ、そんな器用なタマじゃないぜ」
言って、ニッと笑った。
「え……?」
そしてキールは今度こそ背を向けドアを閉めて行ってしまった。
ジンは、なんだアイツというような顔で眉をひそめている。
唯もポカンとドアを見つめていた。
……どういうこと……?