第4章 君は大事な…
……ジンは優しい。
こんなに大事にされているのがわかるのに……。
なんでこんなに胸が痛いんだろう。
――ねぇ、ジン。
私がただの……普通の女の子だったとしても、こうやって優しくしてくれる?
不思議と、人間自分に熱があると知ると途端気分が悪くなるもので……。
最初はぎこちなくジンに抱かかえられていた唯だったが、宿を発見したキールがこちらに戻ってくるころには、ぐったりとジンに身体を預けていた。
宿に入るには大分早い時間。だが病人がいると知った女将は快く受け入れてくれた。
キールに手続きを任せ、唯を抱えたジンは部屋に向かう。
唯は朦朧とする視界の中ずっとジンを見つめていた。
「着いたぜ。唯平気か?」
「うん……」
心配そうにこちらを見下ろすジンから慌てて視線を外して唯は答える。
そのままそっとベッドに下ろされる。
ジンの温もりがなくなって、ほっとしたような……寂しいような、変な気分だった。
「寒くはない?」
「大丈夫」
「ちょっと待ってな。冷やすもの持ってくるから」
「……ありがとう」
洗面所に消えたジンを見送って唯はゆっくり目を閉じる。
ベッドに入って安心した途端、急に眠気が襲ってきた。
やはり原因は寝不足だろうか。
ジンの声が聞こえてからひんやりとしたものが額に当てられた。
とても心地よくて、唯は深い眠りに身を任せた。
目が覚めたとき、部屋にいたのはジンではなかった。
「あ。唯ちゃん起きたんだね」
訊かれて声のした方に顔を向けると額に乗っていたタオルが落ちてしまった。
キールはそれを取り枕元に置いてあった水の張った洗面器に入れて絞り、また唯の額に乗せてくれた。
「ありがとう、キール」
「いえいえ。それより具合はどうだい?」
「うん。さっきよりは楽になった」
「それは良かった」
にっこり言うキール。そんなキールに微笑み返して唯はふと窓を見る。
外はすっかり日が落ちていた。結構眠ってしまっていたようだ。