第4章 君は大事な…
久し振りに街に入った一行。
ここしばらく殺風景な道が続いたせいか唯は賑やかな人ごみが嬉しかった。
何より、ジン以外のことに意識を向けられる。
そのことに内心かなりほっとしている自分がいた。
「唯? どうした?」
そんな中、隣を歩いていたジンがこちらを向いた。
「……え?」
キョロキョロとしていた唯はジンに視線を向ける。
「顔色が悪い」
そう言って、ジンは足を止めて唯の額に手を当てた。
ドキッ!
これだけで反応してしまう自分がいやになる。
……でも、ジンの手はひんやりして気持ちよかった。
「やっぱり……おいキール! 宿探すぞ」
「へ?」
綺麗な女性を探してやっぱりキョロキョロとしていたキールが、きょとんとこちらを振り向く。
まだ日は充分高い。宿を取るには早すぎる時間だ。
「ジン?」
唯も不思議そうにジンを見る。
するとジンは急に身をかがめて、ひょいと唯の体を抱き上げた。
え?
えぇ!?
目の前にジンのドアップな顔。
きゃあぁ~~!?
「ジ、ジン!?」
周りを行く人々の目が痛い。
「なんだ? ジン。唯ちゃんどうかしたのか?」
キールもいつものように怒ったりせず二人に近付く。
「唯、熱があるみたいだ」
……え?
うそ、私?
今思いっきり顔が赤いのは自覚してるけれど、それは今のこの状況のせいであって……。
確かに、朝からだるさは感じていた。
昨夜またいろいろと考え事をしていたから、寝不足のせいだろうと思っていたのだけれど……。
「OK! オレ先行って探してくるわ!」
そう言ってキールがピューと飛んで行った。
「ジン、大丈夫! 普通に歩けるから」
ジンの腕の中でじたばたと暴れる唯。
こうやってジンに横抱きにされるのは実は二度目だが、それでも心臓はバクバクと今にも爆発しそうだった。でも。
「唯、宿見つかるまでおとなしくしてて」
「っ……」
有無を言わさないジンのその声に唯は黙った。
見上げるとジンは真剣な顔でキールが行った方向を見つめている。