第4章 君は大事な…
そっか。
ジン、恋人いないんだ……。
唯はこっそり胸を撫で下ろした。
最近、ジンのことを意識している自分がいる。
まず気になったのが、恋人の有無。
ジンはずっと旅をしているみたいだから、もしかしたらどこかにジンの帰りを待っているような、そんな相手がいるのではないか……。
そう考えたら途端に胸が苦しくなった。
気になって、いてもたってもいられなかった。
そして、いないとわかった今、こんなに安堵している自分がいる。
……否応なしに気付かされる。
ヤバイ……私、ジンのこと、本当に好きになっちゃったみたい。
……でも、ジンは?
ジンは私のこと、どう思っているんだろう……?
夜、唯は少し離れた場所で寝息を立てているジンを意識しながら考える。
一緒に旅をしていて、いつも一緒にいるけれど、未だにジンの性格は良く掴めていなかった。
ひょうひょうと、こっちが真っ赤になるようなことをさらりと言ってきたりする。
だけど、「好き」とか、その辺りの言葉は聞いたことがなくて……。
想像してしまって思わず顔が火照る。
そういえば、抱きしめられたこともある。
……一つだけ言える確かなこと。
それは、すごく、大事にされている……ということ。
素直に嬉しい。
きっとジンのことを意識したのも、それがきっかけ。
でも。
でも、それは……。
(私が、盗んだ“お宝”だから……)
ズキっ……と、胸の奥が痛む。
ジンは、「王ドロボウ」。
盗めないものはないと謳われる伝説の泥棒。
私が“ジパングのお宝”じゃなかったら、出逢うことも、こうやって一緒に旅をすることもなかった。
そう、……これから旅をしていて、私と同じような女の人がいないとも限らない。
そうなったらジンは、そのコも盗んで、そのコもこの旅に加えるのだろうか……。
――そんなの絶対にいやだ!
ジンが他のコに優しくするのなんて、見たくない。
ぎゅうっと目を瞑る。
……自分がこんなに嫌な女だなんて知らなかった。
こんなこと、考えなければ良かった。
でも、嫌な考えはどんどん浮かんできてしまって……。
眠れない夜が続いた。