第3章 Stand by me
「落ち着いた?」
「うん。ありがとう。……もう大丈夫」
「そう、よかった」
「……ジン? ……もう大丈夫だから」
もう、離して欲しいんです……けど……。
心の中で付け加える。
不安がなくなった今、この状況はかなりマズイ気がする。
意識した途端、さっきよりも胸の鼓動が早くなってきた。
唯は腕の中でもぞもぞと動いてみる。
だがジンはなかなか離してくれない。と、
どげしっ!
「いって!」
ジンが悲鳴を上げた。
どうやらキールがジンの頭に蹴りを入れたようだ。
「何すんだよ、キール」
ジンがようやく腕を緩めてくれたので、唯はぱっとそこから抜け出すことが出来た。
「いつまでくっついてんだよ! 唯ちゃんもう落ち着いたっつってんだろ!!」
キールが凄い剣幕で怒る。
「だって、このまま寝たら気持ちいいなぁと思って」
き、気持ちいい……!?
唯は真っ赤になってジンを見る。
ジンは蹴られた頭を擦っている。
「っかぁ~! だったらオレも唯ちゃんにくっついて寝てやるぅ~!」
と、キールが凄い勢いで唯の胸に飛び込んでくる。――寸前、ジンにバンダナを捕まれ、グエッとおかしな声を出した。
「だーめ。お前がにくっついていいのは肩だけ。その他はオレのもんだぜ」
「○×&%#~!!」
キールが悔しそうに奇声を上げる。
唯はそんなふたりを見ながら、沸騰寸前になっていた。
――なんでジンて、そういうセリフを恥ずかし気もなく言えるわけ?
こっちがもたないんですが……。
「あ。そうだ、その夢でさ、オレって唯を庇って死んだんだろ? じゃあコイツは?」
自分が死んだ話を、妙に楽しそうに訊くジン。
「えっと、キールはジンを殺した相手に怒って向かって行って……」
「お。オレのためだってさ、キール。いい話だな!」
「ぜぇーーったいにゴメンだね! オレはお前が殺されても絶対に向かってったりなんてしねーからなーー!!」
キールの大声が静かな夜の空気を震わせた。
……次は、なんだかとても楽しい夢が見れそうな気がする。
唯はジンと一緒に声を上げて笑った。