第3章 Stand by me
「怖い夢でも見たのかい? オレがなぐさめてあげるよ~!」
キールがいつもの調子で翼を広げる。
唯はゆっくりと起き上がった。
頭上には大きな木。
――そうだ。今日はこの大木の根元で野宿することになって……。
ということは……今の、全部夢?
途端、強張っていた体が緩む。そして。
「唯ちゃん!?」
不覚にもボロボロと涙がこぼれてきてしまった。
よかった……。
夢で、本当に良かった……!
顔を覆って声を押し殺して泣く唯。
――と、ふわっと体があたたかくなった。
「こらぁージンっ! 何してんだ~!!」
キールの怒声が聞こえる。
え……?
瞬間、涙が止まる。
唯はジンに抱きしめられていた。
~~っ!?
展開に頭がついていかない。
こ、これも、夢……!?
「……どんな夢だった?」
ジンの声が近すぎて、ドキドキする。
顔が上げられない。
だって、今顔を上げたら……。
「怖い夢?」
もう一度訊かれて、唯はゆっくりと口を開く。
「……ジンと、キールが……死んじゃう夢」
言いながらあの光景が脳裏に浮かび、また涙が溢れてくる。
「オレとキールが?」
ジンは驚いたふうでもなく、優しく問う。
「ジンは……私を庇って……っ」
最後は結局、また泣き声に変わってしまった。
なんであんな夢、見たんだろう。
……怖い。
ジンとキールがいなくなるなんて、考えたくない。
と、ジンが小さく笑った気がした。
「大丈夫。オレたちはそんな簡単に死んだりしない」
耳元で優しく、でも強い口調でジンが囁く。
「ちゃんと、唯のそばにいる」
その声が、じんわりと心に染み込んでくる。
ジンの声はすごく安心する。
……ジンがここにいる。
そばに、いてくれる。
さっきまでの不安が、スゥっと消えて無くなっていく。