第3章 Stand by me
「きゃあ!!」
こんなときに足がもつれてしまった。
「唯!?」
そのまま唯は前のめりに倒れる。
焦って顔を上げて背後を見ると、追っ手がすぐそこまで迫っていた。
ヤバイ!!
早く立たなきゃ……!
でも足がすくんでうまく立ち上がれない。
どうしよう……!?
「唯!」
ジンの叫び声が聞こえた。
気が付くと唯の目の前に追っ手が立っていた。
大きな剣を振り上げている。
動けない。
……やだ!!
唯は思わず目を瞑る。
「唯!!」
もう一度、ジンの声。
そして何か嫌な音がした気がした。
「ジン!!」
続いてキールの叫び声。
……痛くない……?
唯は恐る恐る目を開ける。
そして、その目を疑った。
「ジ……ン?」
声が震える。
ジンが倒れている。
その周りにジワジワと広がっていく赤いモノ。
やだ……。
唯はゆっくり首を振る。
今、目の前に映っているものを受け入れたくなかった。
私を……庇ってくれた……!?
「……ジン!」
叫ぶ。だが応えはない。
「こっの野郎――!!」
「キール!?」
キールが追っ手に向かって弾丸のごとく飛んでいく。
血の付いた剣がもう一度振りかざされる。
「ダメぇ――――!!」
叫ぶと同時、キールの体が硬直した。
そしてその小さな身体がぽとりと、ジンの上に落ちた。
しばらく放心した後、唯はヒュっと息を吸う。
「っいやあああぁぁぁぁぁぁ……!!!」
「――っ! 唯!?」
「っ!?」
パっと目を開けると、すぐそこにジンの顔があった。
…………?
「ジン……?」
唯は確認するように小さく彼の名を口にする。
「唯ちゃん、大丈夫? すっごいうなされてたよ」
そして、ジンの肩越しにキールの心配そうな顔が見えた。