第1章 出会い
「何が王ドロボウよ! 絶対に負けない!!」
ジパングの女義賊、唯はひとり叫んだ。
城のどこかにあるというお宝。
それがどんな物なのかわからない。
ただ昔から城のどこかに、誰も知らないジパングのお宝が眠っているのだと言い伝えられていた。
唯は貧富の差が激しいこの国で、義賊を始めた何年も前からそのお宝を探している。
深夜城に忍び込み、少しずつ、少しずつ……。
だが、未だ手がかりすら見つかっていなかった。
そんな中、王ドロボウを名乗る輩から予告状が届いたのだ。
「ジパングの宝 いただきます」
おかげで城の警備が今までよりずっと厳重になってしまった。
やり難いったらない。
早く見つけなくては……!
唯は正直焦っていた。
『王ドロボウ』の名を知らないわけじゃなかったから。
星さえも盗むと云われる伝説の泥棒。
本当にその王ドロボウがジパングのお宝を狙っているとしたら……。
「絶っっ対に負けない!!」
今まで以上に闘志を燃やす唯だった。
唯は今夜の作戦を考えつつ、いつものように町の中を散歩していた。
歩きながらだと考えがまとまりやすい。
でもそれにはひとつ欠点があって……、
どんっ!
「きゃっ」
「!」
よく人にぶつかってしまうのだ。……今のように。
「ご、ごめんなさい!」
今日ぶつかってしまったのは男の子だった。
歳は唯と同じくらい。
黄色いコートがよく目立つツンツン頭の少年だ。