第3章 Stand by me
「ここ、どこ……?」
唯はその場に立ち尽くし呆然と呟いた。
見覚えがあるようで、ないような森の中の一本道。
そこに唯はひとり立っていた。
「なんで、私こんなところに……?」
近くに人の気配はない。
「ジン? ……キール?」
――なんで誰もいないのだろう。
鳥の囀りも聞こえない。
風で木々が騒ぐ音も聞こえない。
何も、聞こえない。
……不安。
唯は頭を振って、とりあえず道に沿って歩くことにした。
さっきまで確かに一緒にいたはずの、二人の名を呼びながら。
「キール? ……ジンっ……どこに行ったの?」
自分の足音だけがやけに耳につく。
二人とも、どこに行ってしまったんだろう。
はぐれてしまったのだろうか?
それとも……置いていかれた……?
そう思ったら、一気に不安が爆発した。
「ジン! どこ!? キール!?」
大声で叫ぶ唯。
その時、
「……!!」
確かに、人の声がした。
唯はそちらに向かって走る。
今の声は確かに……!
「ジン! キール!」
すると目の前にジンとキールが現れた。
二人とも唯と同じ方向に走っている。
「唯!」
「唯ちゃん! どこに行ってたの!?」
「それはこっちのセリフよ!」
唯はふたりに追いついて叫ぶ。
するとジンが後ろを振り返りながら言った。
「とにかく今は逃げろ!!」
びっくりして後ろを向くと、いつのまにか追っ手が大勢やってきていた。
「ジン! このままじゃ追いつかれちまうぞ!」
「もう少しだ、ここを抜ければあいつらも追ってこれない」
唯はそう言うジンを不安そうに見る。
……なんでだろう、いつもジンのそばにいれば安心するのに……。
さっきからずっと、不安が消えない……。