第2章 自分の気持ち
「ふぅ~。仕事終わりのベッドはやっぱ最高だね」
黄色のコートを脱ぎ捨てて、ボスンっとベッドに沈むジン。
ジン達と半月ほど同行しているが、宿屋に入ったのはまだ5回目くらいだ。
他の日はだいたい野宿か、運良く空き家を見つけられればそこを借りるといった感じだった。
唯はそんな生活に漸く慣れてきたところだ。
「ねぇジン。明日はどこに向うの?」
自分ももうひとつのベッドに腰を下ろして唯は訊く。
「んん~? まだ考えてない」
「……あ、そ」
今日、ジンは狙っていたお宝を手にすることが出来た。
それは、唯がこの王ドロボウと初めて一緒に手に入れたお宝でもあった。
正直、唯にとっては結構しんどかった。
でも、お宝を手にした瞬間、なんともいえない幸福感に包まれた。
唯はこの王ドロボウが次はどんなモノを狙うのか、楽しみでならなかった。
「唯、先にシャワー使っていいぜ」
「あ、ありがと」
ジンは宿に泊るとき、いつもに先を譲ってくれる。
レディファーストとか、考えてくれているのだろうか……?
「っつ……」
シャワーを浴びながら唯は足首に手を触れ顔をしかめた。
(あちゃ~。やっぱちょっと腫れてるなぁ……)
実は、今日追っ手から逃げているときに足を捻ってしまったのだ。
(……ドジったなぁ)
歩きながらだんだんと痛みが増していた。
でも顔には出さなかった。
――ジンたちには知られたくない。
いきなり足手まといに思われたくなかった。
多分、まだ気付かれていないはずだ。
……気付いて欲しくなかった。
(ほっとけば治る治る!)
気楽に考えて唯はシャワーを止めた。