第1章 出会い
唯は大声で叫びながらジンに追いつく。
「んん~? そのまんまだよ。ま、これからよろしくな」
「よ、よろしくなって、そんな急に決めないでよ! だって、私がいなくなったらこの国が……」
「時々戻ってくればいい」
「そーだよ。唯ちゃん。オレたちと一緒にいればどんなお宝でも手に入れられるぜ!」
「そ、そりゃ、そーかもしれないけど……」
唯の声はどんどん小さくなっていく。
――唯は自分の気持ちに戸惑っていた。
すごく理不尽なことを言われているはずなのに……、“嫌だ”と言えない。
それどころか、なぜかこんなに胸がドキドキしている。
「あ、言っとくけど、オレから逃げようと思っても無駄だぜ。何度でも盗むから」
こちらを見もせずにジンは言う。
「なっ……!?」
「ジン、それはキザだと思うぞ」
「そうか? ……でもキールには言われたくない」
「なんだと~!!」
二人は急に口げんかを始めてしまった。
唯はそんな二人を交互に見ながら、やっと自分の気持ちに気付く。
……そうだ。
この高揚した気分は、狙っていたお宝を発見した時と同じ……!
いや、それ以上だ。
この王ドロボウと一緒に旅が出来たら、これからどんな楽しい、ワクワクするようなことが待ち受けているのだろう。
そう思ったら急に体に震えが走った。
「唯ちゃん?」
キールが顔を覗き込んできた。
「……ううん。何でもない。……ねぇ、ジン」
「ん?」
「私、足手まといになるかもしれないわよ」
「いいよ。オレが守るから」
「オレも! 誠心誠意唯ちゃんを守る!」
キールが肩から離れ、唯の目の前でかっこよくポーズを決めた。
「ふふ……キール、ありがとう」
唯は、初めて会ったときと同じ笑顔をふたりに向けた。そして。
「ジン、ごめんなさい。私、さっきあなたに酷い事言ったわ」
「何か言ったっけ?」
しらばっくれているのか、本当になんとも思っていないのか……。
唯は少しテレながら、右手を差し出した。
「これからよろしく。ジン、キール!」
……こうして、王ドロボウとの長い旅が始まった。