第2章 登校
「こんなに重いもん使うぐらいならプリミティブにすりゃあいいのに」
「プリミティブに出来てりゃとっくにそうしてるっての。しかも今はこれで別に不便なことないからいいっての」
プリミティブ派とソード派ではゲヴァルトを発動する根本的な方法が違い、莉子のゲヴァルトはその際に必要なのがこのケースに入った道具らしい。
「そっかぁ、莉子ちゃんソード派なんだよね…」
「千春兄今更何言ってんの?」
「いやぁ…知ってたけどさ、うちにいるやつっていうか俺ら4人ってほとんどプリミティブじゃん?千冬だってソードだけど莉子ちゃんほど大掛かりじゃないし」
紺野家はゲヴァルトが発展途中の頃から代々ゲヴァルトを受け継ぐ家庭である。それにより紺野家のこの4人は全員ゲヴァルトホルダーである。
莉子達の住んでいる住宅街、下町を抜け大きな車のエンジン音と車のガスの匂いに包まれた青年都市に出た。この国の首都を示すこの地域には〇〇都市と付く場所が山ほどある。ちなみに住所や町の名前とは別、つまり通称みたいなものである。ここまで来ると車や学生の数が莉子達の家の側より大幅に増す。
「俺友達来たから先に行くな千秋、莉子ちゃん」
「俺も行くわ」
「僕も先に行きますね」
千春と千夏、千冬が先に行き莉子と千秋だけがポツリと取り残された。だが莉子と千秋は同じクラスであったためそこまで気にはしなかった。
「じゃ、そろそろ行くか俺たちも」
「そーだね。行こっ!」
莉子と千秋も学校に向かって再び歩き始めた。
「それにしてもすごいよねぇ…」
「何が?」
「あたしと千秋、またクラス一緒なんだよ?」
「確かにな。いい加減兄貴や千冬と一緒になってもおかしくねぇもんな」
莉子と紺野家の四つ子は幼稚園の時からずっと一緒だが莉子は千秋としか同じクラスになったことがない。
「てことはもう12年経つのか」
「そして今年で13年目」
学校に着き生徒もそれなりにいる。
「まだ人いるし大丈夫じゃねぇか」
「あと3分でチャイムなるけど」
「お前が二度寝するからじゃねぇの?」
「なんで知ってんの?」
「そんなことはいいから行くぞ。」
「よくないし!!」
焦りながら二人は教室に向かった。