第5章 東条家とゲヴァルト
「ただいまー」
莉子は妹の梓巴を呼ぶため家に戻っていた。
「あ、お姉ちゃんおかえり」
莉子の妹である東条梓巴は中学2年生で、莉子や千秋らと同じくゲヴァルトホルダーである。
「あのさ、晩御飯もう用意しちゃった?」
「まだだよ。今から作るところ」
父親と母親が不在になることが多い東条家は梓巴がご飯を作ることが多い。莉子とは対称的で梓巴は家事全般こなせるのである。
「志紀さんがね、うちで食べて行きなさいだって!」
「あ、そーなの?」
紺野家で食事をとることが日常化しつつあるため、梓巴は驚くこともなく紺野家宅に向かう支度を始めた。
「今日唐揚げだって〜」
千秋からのLINEのメッセージを見て『りょ!』とだけ打って送信した莉子。
「今日私唐揚げ作ろうと思ってた!」
「まじ!?」
偶然の出来事に驚きながら家を出た2人。
「で、お姉ちゃんのゲヴァルトは上達したの?」
「うーん…微妙かな。梓巴みたいなコントロールは全然できないし…向上してるのはパワーだけかな」
梓巴のゲヴァルトは空気圧縮(エアープレス)。空気を圧縮して人の動きを止めることも可能である。その中でも梓巴は一部だけ圧縮を解除するなど細かな操作が得意なのである。
「お姉ちゃんのゲヴァルトは力技っぽいところあるもんね」
「それ褒めてんの?」
「さあね」
それに対して莉子のゲヴァルトは荒っぽいところも目立つ。その改善を千秋に頼んでいるのである。