第2章 登校
今日は入学して3日目の登校日。
「千秋…」
莉子は自分の荷物を見せびらかしてアピールし始めた。
「それがどうした?」
「…鈍感にも程があんでしょ…?」
「まっ、まあまあ」
紺野家から少し離れた道で莉子と千秋が口論し始めた。正直一般人から見たらくだらないことであろう。
「何?持てって言いたいのか?女だからってか?馬鹿かよ」
「はぁ!?」
「お前らな…」
千春に続き呆れたように言ったのは千夏。
「うっせぇよ千夏。」
「ほぅ…うるさいってか?それはお前じゃないか?」
「…」
千夏の一言が効いたと思われたのはつかの間。
「そーだそーだ。」
莉子が言った瞬間、やっちまったよこいつ、と千秋以外の紺野兄弟は思った。
「お前が話しかけてきたんだろーが…」
「こんな千秋兄さん、弟として恥ずかしいです。」
5人の歩く足が止まったと同時に冷たい風が一瞬吹いたように感じた。どうやら千冬の言葉が千秋に一番効いたようだ。
「…すまん」
落ち着いた千秋の前で莉子はニコニコしながら咳払いをした。
「は?」
訳がわからなくなるのも無理はない。莉子がその千秋の前に背負っていたギターケースを差し出したのだから。
「持ってくれる?」
「まだ言うのか…」
千秋は断ろうとしたが後ろからの男3人の視線を感じた。
「らしくないな千秋。」
「素直に受けとれよ千秋。」
「どうなっても知りませんよ千秋兄さん。」
「…ったく…ほら貸せよ。」
千秋はしぶしぶケースを受け取った。それを満足げに莉子は微笑んだ。
「って重てっ!!」
「これぐらいの重さ当然です。」
「見た目ギターでこの重さは詐欺だろ…」
「ギターに似せてないし中身似てないし何言ってんの?」
そう、これはギターではなく、ゲヴァルトに使用する一種の道具。武器とも呼ばれているが莉子はギターケースに入れてカモフラージュをしている。