第2章 登校
ピンポーン
莉子は両手を両膝に当てて下を向き、呼吸を整えながらインターフォンのボタンを押した。そして手を偉そうに腰に当てながら叫ぶ。
「千秋〜!まだいるんでしょ〜!」
はぁとため息をつきながら背中にあるギターケースに目をやる。
ゲヴァルト。すなわち能力。世界中のごくわずかな人間のみが持つことの出来る特殊的力。ゲヴァルトは大きく2つに分けることが出来る。一つは自分の体のみで発動可能なプリミティブ派と武器、および道具を発動条件となるソード派の2つ。そしてゲヴァルトを持つものをゲヴァルトホルダーという。故意にゲヴァルトとゲヴァルトホルダーの存在を教えるようなことはしてはならない、がゲヴァルトホルダーでいる条件。莉子はこのうちのソード派にあたるゲヴァルトホルダーである。
扉が開いた。
「あっ、ちあ…」
ドアの方に目を向けたが家から出てきたのは長男の紺野千春(こんのちはる)だった。
「悪かったな、千秋じゃなくて。」
莉子がため息をついている間にまた扉が開いた。
「千秋?」
出てきたのは次男の紺野千夏(こんのちなつ)。
「チッ」
「なんで俺は舌打ちされなきゃいけねぇんだ?」
「あたしは千秋を待ってるの。」
「順番的に千秋は次来るんじゃねぇの?」
「そっか、千春、千夏ときたら…ね!!」
紺野家は四つ子であり上から千春、千夏、千秋、千冬である。
「春、夏ときたなら次は必ず千秋だよ!!」
「流石にそれはないんじゃないかな。」
紺野家の家の小さな門の前で自慢げに待っている莉子は言った。それに千春が苦笑しながら言ったと同時に扉が再び開いた。
「千秋!…い…」
来たのは四男の紺野千冬(こんのちふゆ)。
「…はぁ。」
「えっ、えっと…」
わざとらしく大きなため息をついていた莉子に戸惑いを感じた千冬がいた。
「何ため息ついてんだ?…莉子。」
イライラしかけている莉子の頭を後ろからポンと手を置いたのは莉子がずっと待っていた三男、紺野千秋(こんのちあき)だ。
「千秋!ようやく来た!早く行こ、遅刻する〜!!」
「わかってるって。」
そして5人は学校に向かって坂道を下っていった。