第2章 訪問
「お嬢さんの言い分はよく分かった。却説(さて)、当社には入社試験という物があるんだけどどうしようか」
長身の男は、包帯の巻かれた腕を組んではううんと悩む素振りを見せた。
「おい、太宰。娘に試験を受けさせる気か?」
眼鏡を掛け直しながら、長髪眼鏡の男。
太宰と呼ばれたその男は、"いやね、こんなに可愛らしいお嬢さんがここ迄云ってるんだよ?国木田くぅん?"と少々小馬鹿にした様子で長髪眼鏡の男__国木田さん?だろうか__に向かって云った。
「あのっ、試験だけでも受けさせて下さいませんか……!きっと皆さんのお役に立てるはずです……不合格でしたらすぐに出て行きますので……」
思わず云ってしまった。
藁をも縋る思いで此処に来たのだから、引き下がる訳にはいかない。
"だが……"、"しかし余りにも突然で………"
等というざわめきがあちこちから聞こえてくる。
(やっぱり無理なのかな…………)
そう諦めかけていた、その時だった。
「あぁ、社長。今お呼びしようかと思ってたんです」
太宰さんが薄笑いを浮かべ、奥の扉へ目を向けた。
其処には、男が立っていた。長く綺麗な銀髪を優美に下ろし、堂々とした佇まいであった。そしてその男は此方へ近付いてきた。
(あの人が社長さん……)
ちらり、と社長さんの顔を見上げると、ばちりと目が合ってしまった。