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【文スト】日向へ連れ出して

第2章 訪問




「ええ、と。私此処で働きたくて……」

どうにか社長さんに説明しようとするも、上手く言葉が紡げない。
緊張で既にいっぱいいっぱいだった。


「知っている」

「えっ」


目を瞬かせる。
聞こえていたのだろうか。
(もしかして相当五月蝿かった……?)
さあ、と血の気が引いた。
これは試験云々の話ではない。
急いで謝罪の念を述べようとした。


「あっあの! ごめんなさい、私っ」

「試験くらい、受けて行けばいい」

「え…………」


またも目を瞬かせる。
信じられなかった。真逆、こんなあっさりと。

「い、いいんですか……!?」

「そう云っている」
社長さんは"後は任せた"と云うと、また奥の部屋に戻って行ってしまった。



天にも昇る想いだった。
「ありがとうございます! ありがとうございます……!!」
社長さんに向かって私は何度も頭を下げた。
試験を受けさせて貰える事が、なにより嬉しかった。


「いやぁ良かったねえ。私は太宰治。頑張ってね、ひなたちゃん」

「はい! 本当にありがとうございます、太宰さん!」

私は笑顔で太宰さんにお礼を云った。
すると他の社員さんも集まってきた。


「試験、頑張って下さいね。僕は中島敦と云います」

少し年上くらいの白髪の少年が笑いかけてくれた。

「ありがとうございます、中島さん」


「娘、良かったな」

理想と書かれた手帳を大切そうに抱え、国木田さんがやって来た。

「ええと、国木田さん。ありがとうございます」

「と云っても試験に受からなければ何ともも云えないがな」


(う……、確かにその通りだ、でも)

「絶対受かってみせます!」
ぐっと両の手の拳を握り締め、私は決意を固めた。


「はーい、いいかな? ひなたちゃん」

試験を受けられる権利を得られ暫くその嬉しさに浸っていた時、太宰さんが声を掛けてきた。

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