第2章 訪問
「君は此処が如何云う所か知ってそう云っているのかな?」
先程までソファーに座っていたひょろりとした背の男性が、私の居る入口付近まで近付き、にこりと笑顔を向けそう云った。
私は恐る恐る口を開け、ある告白をした。
「はい。私は異能力者です」
「!……こんなお嬢さんがねぇ」
「なっ……!」
更にざわつく武装探偵社。
それもそのはず、突然訪問してきた者が此処で働きたいだの、自分は異能力者などとのたまわっているのである。無理もない。
「何で此処で働きたいの?」
腕を組み、にこやかな笑みを浮かべたまま、ひょろりとした長身の男は云った。
「私の両親は先月亡くなりました。身寄りの無い私を救ってくれた祖母ももう長くはありません。
私には何も取り柄なんてありませんが、力があります。
この力を誰かの為に使いたい。祖母が私を救ってくれた様に私も誰かを救いたいのです」
なんて滑稽なんだろう。
突然やって来ては、自分の身の上話をする私を見て、彼等は呆れているだろうか。
「何も取り柄のない私でも生きていても良い理由が欲しいんです。お願いです、此処で働かせて下さい……!」
一通り喋り終え、私は深く頭を下げた。
あまりにも一息で喋ってしまったせいか、心無しか息が上がっている様な気がする。
未だに緊張が解けないせいかなかなか顔を上げられないでいると、"顔を上げて"という声が聞こえ、私はそれに従った。