第6章 いざ試験へ
「……却説(さて)、谷崎君。ここからはちょっと真面目な話をしよう」
「……はい」
二人して光の当たらない壁際による。
向こうでひなたやナオミ、他の社員達が楽しそうに話しているのが見えた。
「君も見た通り、彼女の異能『影絵』は、隠密能力に長け、人を拘束することもできる。いわば応用が利くんだよ。きっと攻撃だってできるだろう。暗殺とかね」
「……!」
驚いたように谷崎が顔を上げる。
「真逆(まさか)……」
「そう、奴等の手が届く前で良かった」
「ポートマフィア、ですか……」
神妙な面持ちで太宰は頷く。
ポートマフィア__横浜を拠点とする凶悪なもう一つの異能者集団。
嘗て、社員である中島敦を何度も襲ってきた相手だ。
「暗殺なんて、そんな……」
谷崎は下唇を噛んだ。
「ま、まだ何も起きてないからね。でももし何かあれば__社員として彼女を守って欲しい」
「はい__!」
こうして私、富永ひなたの入社試験は、無事幕を閉じたのでした。