第2章 訪問
___コンコン。
静かなノック音が、此処、探偵社に響いた。
がちゃり。
私はゆっくりと、でもしっかりとその戸を開けた。
人々の視線が武装探偵社入口に降り注がれる。
そしてすう、と息を吸って云った。
「あの、此処は武装探偵社で合っていますか?」
そっと部屋へ足を踏み入れる。
がらがらと後ろ手で引いていた鞄が鳴る。
大勢の前で話すのは苦手だけれど、決心したのだ。
もう逃げないと。
「そうですが、何かご依頼でしょうか?」
長い髪を後ろで束ねた眼鏡の青年が、私に近付きそう云った。
「突然すみません、私は富永ひなたと申します。依頼ではなくお願いがあって来たのです」
「お願い?」
「私を此処で働かせて下さい」
ざわっ、静かな探偵社から戸惑いの声が上がった。