第6章 いざ試験へ
「全部偽物って事ですか……? なら犯人は……!?」
未だに影に捕らわれ、地面に転がっている犯人を見る。
よく見ると、私とさほど年齢の変わらない少年の様だった。
「おーい、そろそろ起きてよ」
太宰さんはしゃがみ込み、犯人に近づく。
更に、太宰さんが犯人の体に触れると、異能で縛っていたはずの影が霧散していた。
(太宰さんの異能……!)
驚くのも束の間、自由になった犯人はむくりと起き上がり、深く被っていた帽子を脱いだ。
そこには____。
「な、中島さん!?」
犯人もとい犯人役は、なんとびっくり中島敦さんだったのだ。
「いやぁ中々の演技だったよ敦君!」
「茶化さないで下さいよ! もう! 凄く大変だったんですからね」
頬を膨らませ、太宰さんに詰め寄る中島さん。
(ぜ、全然気付かなかった……)
そして、はた、と気付く。
(仮にも試験を受けさせて貰うのに頭を一緒に下げてくださった方に私ってば……!)
「すすすすみません中島さん! 私思いっきりやっちゃって……!」
「あぁ、いえいえ大丈夫ですよ! このタフさが僕の取り柄なので……本気で戦って貰えたのなら演技をした甲斐がありましたよ」
こちらが何度も頭を下げても中島さんは笑って許してくれた。
(皆さん良い人すぎる……)
たった1人の入社試験の為にこんな大掛かりな事をしてくれて。
(__やっぱり、ここで働きたい)
その時、からんと一つの足音が響いた。
「社長!」
そこには、厳しい面持ちをした社長さんが立っていた。
「娘……富永ひなただったか」
「は、はい」
社長さんにじっと見下ろされる。
暗い路地が一瞬で緊迫した空気に包まれた。
「試験の合否を言い渡す。結果は__」
(どうか、お願いします……!)