第6章 いざ試験へ
谷崎さんの忠告も虚しく、異能が解除され、私の姿が露わになる。
「な……っ!?」
犯人がゆらりと此方を振り返り、懐からキラリと光る物が___。
「危ない___ッ!」
ナイフが私に振り上げられた刹那、谷崎さんが私に覆い被さる様に身を投げ出す。
「兄様! ひなたさん!」
私と谷崎さんの身体が一緒になって地面を転がった。
「たっ、谷崎さん!」
谷崎さんを支えると、お腹のあたりから血が滲んでいるのが見えた。
「血が……っ」
「ボクは大丈夫だから、犯人を……!」
「兄様!」
ナオミさんも緊急事態に気付き、すぐ駆け寄ってきた。
____どうしよう。
谷崎さんは大丈夫と云ってくれているけれど、血はどんどん広がっていき、谷崎さんの白い服を赤く染めあげている。
(でも、今は試験中で、犯人が……)
そうこうしている内にも、犯人は私達に近付いて来る。
どうしよう、考えろ、自分。
今、自分が何をすべきか______。
犯人がナイフを振りかざす前に、私は2人の前に立ちはだかった。
「ひなたちゃん!!」
「__異能力『影絵』_____!!」
雲に隠れていた月が姿を現し、影が濃くなっていく。
途端に、全ての影が私の足元に集まり、私達3人を覆い隠した。
黒々としたシェルターの様な物が、私達を包み込む。
其処には、背景に混じる事無く、黒い影がはっきりと犯人の前に立ちはだかっていた。