第6章 いざ試験へ
立ち上がり、意識を集中させる。
「異能力___『影絵』」
途端に私の足元からずおお、と無数の影が伸び、私を影に隠した。
後ろでナオミさんが驚いた声を上げているのが分かった。
向こうにいる谷崎さんにも、私が異能を使ったのが分かっただろう。
(よしっ……)
そっと、でも素早く、犯人に近付く。
____私の異能『影絵』は、あらゆる影に身を潜める事が出来る。
物の影だったり、月の影だったり、自分の影だったり。
しかし、姿は消せても音は消す事が出来ない。
また、姿を消している間は異能に関する他の行動は出来ない。
つまりは、姿を消しながら攻撃は出来ないのである。
だから、これから一度異能を解除しなければならない。
犯人を拘束する為に。
犯人まであと数m。
異能を解除しようとした、その時。
「ひなたちゃんッ、来ちゃ駄目だッ!」
「……!?」
谷崎さんの声が響いた。
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今日、7月30日は谷崎さんの命日だそうで。