第8章 八話
魅力的と言われた時、俺は話を逸らしたけど、やっぱり気になった。
山中のほうが俺よりも良いと思うんだが…。
魅力的じゃないと思うのは身体なのか…?
………。
「…特別、ですか。」
「…そう…トクベツ。」
唇を寄せて俺の肌に口付けてくる。
………。
先生がどれくらいの人と関係を持っているのかは知らない。校長先生とも関係を持っていたが、他にも校内でいるのかもしれない。
そんな中でたかだか数回しかセックスしてない俺が特別?
「……ふざけないで下さい。」
「…ふざけてなんかないわ。本当だもの。」
「…他の人にもそう言っているのでしょう?」
すると先生は落ち込んだように顔を俯けた。
「…意地悪ね。」
ボソッとそう呟いて俺に背を向ける。…この態度も本当なのかわからない。
「…確かにダンナのことは大事だし…トクベツよ?愛しているわ。」
「……なら、俺のことは…。」
「…前に言わなかったかしら?ほっとけないって。……アナタは昔の私と重なってるの。」
………。
「…今のアナタだってそう。前の私とそっくりだわ。」
「…どういう、ことですか?」
……やはり先生もこういった経験を?
「…私も同じようなこと言ったことあるから……。」
先生の背中はどこか寂しげに見えた。
先程までは疑いの目で見ていたのに。
……何故そう思うのだろう。別に俺にはどうでもいいじゃないか。特別だと言われても、ほっとけないって言われても、先生は既婚者だ。俺とは只の遊び…。間に受けるな。
「…ねえ、高木くん…好き。」
ドクンと心臓が跳ねる。
「……高木くんが私のこと好きじゃなくても構わない。でも私はアナタを必要としてるの。」
肩を震わせてる先生。
先生は今まで何があったのだろう。
惑わされるなと思うのに、耳を傾ける。
ほっとければいいのに、俺は先生に手を伸ばしてる。
本当に俺はどうしたのだろう。
腕の中に抱き寄せた。衝撃だった。何をしているのだろうと…。
「…高木、くん…。」
「………。」
「……麗香って呼んで…?」
「……麗香…さん。」
俺は先生の名前を呼んで目を閉じた。
……これから先生にどんどん堕ちていくとも知らずに……。