第5章 五話
その後、汗を流して、髪を乾かすこともせずすぐ様ベットに倒れ込んで、4回目のセックスに突入。
終わるころには19時を回っていた。
「…また明日ね。」
疲れてそのままシーツに包まる一ノ瀬は満足げにそう言った。
どうやらもう少しいるみたいだ。俺は先にホテルをでた。
家に帰るころにはすっかりと辺りは暗い。
家の門が見えると、俺は思わず足をとめた。
知っている人がいたからだ。まあ、知ってるといっても顔見知り程度で、挨拶ぐらいしかしたことはないが。
久々に見た気がする。
「…どうも。」
近づいて挨拶すると、悲しそうな顔をされた。
「…遥人くん……。久しぶりね。」
「…どうかしましたか?」
こんなに暗いのに1人で危ない。女性なら尚更だ。
綺麗に腰まで伸びたストレートな黒髪。顔も整っており、美人と呼ばれるに相応しいだろう。それに久々見たからか、少しまた大人っぽくなった気もする。
…まあ年上だしな。
明るい印象が強いが、今の彼女は不安げで今にも泣き出しそうな表情だ。
「……あの…悠人くん…いるよ、ね。」
悠人とは、俺の兄の名前。
そう、この人は兄貴の元恋人。
兄貴にとっては1番初めの彼女だ。
俺は兄貴とこの人に何があったのか知らない。
兄はいると思うが、また女性を連れ込んでいるだろう。
…この人は知っているのだろうか。兄貴が遊び人だということを。
そんなこと考えてると、兄貴が家からでてきた。そして案の定、知らない女性も。
兄貴は俺に気づいて近寄ってくる。
「…お!遅かったなー、遥人。おかえ……。」
言いかけの途中で兄から笑みが消え、冷めたような表情に変わる。
それはきっと、元カノに気づいたから。
門から女性が出てきた。
制服着ているから学生か…。確実に兄貴より年下だ。
その子は俺を見るなり笑顔になった。
「…わぁっ!カッコいい人…。悠人さんの弟ですか?」
「……ぇ、あー、ああ。そうだ。」
「…悠人さんとは似てないですけど、素敵ですね♪」
………。
「……悠人くん…、私、話が…っ!」
「危ねえから送る、和葉。」
言葉を遮って俺たちから距離をとる兄。
「…えー、いいですよぉ。また連絡しますね、悠人さんっ。それじゃあ。」
笑顔で手をブンブンと振って、駆けてこの場から立ち去っていった。