第4章 四話
自分がしたことは確かに駄目なこと。最低なこと…それは分かりきってる。
でもバレても特別驚かないしどうすることもない。
胸ぐらを掴む手に力が込められて、また殴られると察した。…案の定そうで、抵抗もしなかった。
「…んで……何で恵理に手をだしたんだよ…。」
……その声は震えていて弱々しい。
この男は本気で一ノ瀬のことが好きなのだろう。
「…お前……サイテーだな…。」
手を離してそのまま去っていった。
………。
殴られた頬を触るだけで痛みを感じる。
流石に腫れそうだ。
家に帰るとやっぱり兄に驚かれた。
…湿布を貼る。
「…どーしたんだ?喧嘩か?」
そう言うなり頭を撫でてくる。
「…そんなんじゃない。」
手を払いのける。
……今日は連れ込んでないんだな。
ニヤニヤと笑う兄から顔を背ける。
「…なんだ…。」
「…いや~、青春だなって…。」
………。
なにが青春だ。全く笑えない。
「…あ、今日父さんと母さん帰り早いらしいよ。」
「…だから連れ込んでないのか…。」
納得がいく。するとむぅっとした顔をする兄。…まあ本当に怒ってはないと思うが。
「…あのね…俺だって毎度毎度連れ込まねぇよ。」
はぁーあっと大袈裟に溜め息ついてソファに寝そべる。
「……なにかあったのか?」
その問いかけに兄はガバッと起き上がって肩をくんできた。
「…流石我が弟よ!…よく気づいたな。」
「……。」
面倒くさい。
構ってちゃんか…。
嬉しそうな顔をして、そんな悩みでもなさそうだ。
「…いや~実は元カノに復縁迫られてさー。」
「…付き合えばいいだろ。」
「…うーん、でもなぁ…彼女いるし。」
「…じゃあ付き合うなよ。」
「…テキトーだな。カッコいいお兄様の悩みなんだから真面目に考えてくれよ~。」
………。本当に面倒くさい。
人の悩みに興味ない。
「…まあ彼女が増えるのはいいけど。」
「…何で別れたんだ?」
「………さぁね。忘れた…。」
間が少し気になったがあえて聞かなかった。