第1章 一話
「………。」
「…遙人(ハルト)くんって結構上手いんだね。」
気持ちよかったと嬉しそうに更にすり寄ってくる。
目の前に映るのは見慣れない天井。
ここはラブホテル。初めて入ったのがまさか恋人の友人とは。
しかもこの子にも恋人がいるのだ。
「……罪悪感とか、無いのか。」
「…え、それって美樹(ミキ)への?」
美樹とは俺の彼女の名前。
チラッと目で彼女を見ると目が合った。
彼女は上体を起こして、胸元をシーツで隠す。俺に振り返った彼女は笑顔だった。
「…あるわけないじゃんっ。寧ろ嬉しいの。あたし美樹のこと嫌いだもん!だからその恋人を寝取ったから今凄く嬉しいっ。」
………。
普段はあんなに仲良さげに一緒にいるのに…。よくわからない。
「…でも遙人くんだってないでしょ?」
……罪悪感。
確かにそんな感情が全然湧き上がらない。
…俺は美樹のことが好きではないのだろうか。
この行為はきっと浮気だ。それが良くないことは学生でもはっきりと分かる。
なのに何も感じない。…最低だな。
「…美樹って顔良いし、優しいしモテるけどさぁ、胸はあたしのほうが大きいもん。スタイルだって絶対あたしのほうがいいのにっ。」
急に怒り出す。
「…遙人くんだってそう思うでしょ?」
自信満々にニコッと笑う。
そして再び俺にすり寄る彼女。
「…あたしと美樹とどっちが良かった?」
まあ、遙人くんとが初めてって言ってたからなぁっと呟く。
そして上を向いてた俺の視界に再び彼女が映る。
どんどん近づいて、口が触れそうな位置まできた。
「…聞かなくても分かるよ。」
口付けてきた彼女。
もう一回の合図。
軽く触れ合う口付けは徐々に舌を絡める濃厚な口付けへと変わった。
そしてまた、部屋には喘ぎ声と肌と肌がぶつかり合う音が響いた。