第3章 三話
……椅子に座らされる。
「…あの、手当てですか?」
そこまでするほどでもない。先生はシップを取り出しているが。
「…そうね。まあ、聞きたいことがあるの。」
そう言って距離を詰めてくる先生。
何なのだろう。接点もないから分からない。
「…あの、楽しいですか?」
先生は先程から笑みを崩さない。その微笑みも理解できなかった。
「…んー、どうかしら?」
とぼけたような言い方だ。
「…で、何でしょう。」
「…一ノ瀬さんってああいう子なのね。」
ああいう子とは──?
意外と言って俺の隣に座る。
「…高木くんはどう思う?ああいう子。」
どうって……。
別にどうでも。
何も言わない俺。でも理解したのか、
「…ま、他人のことなんてどうでもいいわよね…。」
ふふっと笑って足を組む。スラリと綺麗な足を惜しげもなく出したミニスカート。やはり色気がある。
「…ワタシね、この前見たのよ。」
「………。」
「…一ノ瀬さんと山中くんがセックスしているのを。」
しかもここで。と言った先生は本当に楽しそうだ。思わず先生を見てしまう。
更に近寄って俺の制服の上から指でスーっと撫でてきた。
…何故こんなことを俺に言うのか。
ますます理解できない。
「…邪魔するのもあれだから出たけど。」
保健室でするとは…。現に先生にバレてる。本当にもっと考えて行動するべきだ。
「…一ノ瀬さんってどうなの?魅力的な身体?」
「…何故俺に聞くんですか?」
山中に聞けばいいのに。
先生は相変わらず笑ってる。
「……あの、帰ります。」
立ち上がろうとするが制された。
何なんだろう。
「…ふふ。とぼけるの?」
俺の耳元まで顔を寄せてくる。
「……この前、化学室で一ノ瀬さんと何してたのかしら──。」
その言葉に思わずハッとした。
囁くような声に何故かゾクッとする。
何してたのかしら。なんて。先生は絶対知っている。
見られたのだ。あの光景を…。