第1章 一話
そして、俺にとってはどうでもいい一ノ瀬の彼氏についてやら、とにかく恋愛話みたいな会話は多分30分ぐらいはしていたと思う。
ほぼほぼ聞いてないが…。
そんな話が終わったのも、一ノ瀬のある言葉で終わった。
「……そろそろ何か食べない?お腹空いたー。」
「…そうだね。でも買いに行かないと無いんだよね…。私買ってくるよ。」
そう言って美樹は立ち上がる。
窓から外を見るともう日は傾いて薄暗い。
「……俺も行く。」
その言葉に美樹は手と首を振った。
「…いいよ、ひとりで行けるから。何がいい?」
「…コンビニ?」
「…うん。」
ここからコンビニだと少し距離がある。まあ、歩いて行けない程の距離じゃないが。
「…遙人くんはなにがいい?」
その言葉に俺は何でもいいと答えた。
そして一ノ瀬も何でもいいと。
「…えー、何で二人とも。何でもいいが一番困るのに…。」
まあ、適当に買ってくるね?と言って部屋を出て行こうとする。
「……やっぱり俺も…。」
行く。とは言えなかった。後方から俺の服の裾を軽く捕まれたからだ。
それが一ノ瀬だということはわかる。
………。
ここで一ノ瀬と二人きりになればきっと、さっきの続きをしてしまうだろう。
一ノ瀬は続きがしたいから裾を掴んできたんだと思う。
美樹は不思議そうに見てきた。
「…何でもない。気をつけろ。」
「…え、うん。じゃあ行ってくるね。」
今度こそ美樹は部屋から出て行った。
そして一階から玄関が閉まる音がすぐに聞こえた。
………。
「……そんなに俺とシたいのか。」
「…うん、そう。続きしたい…。でも、遙人だってそうなんじゃない?」
自信満々に聞いてくる。
「……別に…。」
とだけ返した。すると何故か笑われた。
「…嘘つき。」
悪戯っぽく笑みを零して、一ノ瀬は俺の腕を引っ張って、美樹の部屋を後にした…。