第3章 昔と今の狭間で
2,3年が試合形式の練習をしている間、1年はレシーブの練習をひたすらやっている
音駒には秀才はいても、天才はいない
研磨のように相手の動きを読むのが上手い選手や、クロ先輩のように色々な武器を持っている選手など…何かに突出した才能のある選手はいても、それはすべて天才と呼べるレベルではない
それは猫又監督をはじめとする、私達チームの全員が理解している
だが、天才が一人いるチームが強いか?と問われたら答えはNOだ
全員が一定の力を持っていれば、お互いの武器を使いあって勝てる…それが団体競技の面白さでもある
そして、バレーボールの一番の特徴はボールをコートに落とさないというところだ
だからこそ、音駒の戦い方はボールを不格好でもなんでも繋ぐ事にある
そんな戦い方のチームだからこそ、他のチームに比べてレシーブ力が圧倒的に高い
レシーブ力がない選手は、どんなに身長があってもこのチームでは使い物にならないのだ
台に登ってバシバシ容赦なくスパイクを打つと、必死に犬岡君は食らいつく
「はーい10本終わり!手だけで取るとうまくいかないから、足動かすんだよー。次芝山君!!」
しばらくスパイクを打ち続けると、試合の方が終わったらしくレシーブ練を休憩がてら見に来る人が増えた
「相変わらずそらのコントロールは気持ち悪いなぁ」
「クロ先輩うるさい!その寝癖頭にぶつけますよ!!」
「そら!リエーフにはもっとえぐいの出せー!」
「夜久先輩は俺の事嫌いなんスか!?」
がやがやとレシーブ練をしばらくやり、休憩に入るとクロ先輩に呼ばれた
「そら、今日は足大丈夫そうか?」
「はい、調子いい方ですよ。練習ですか?」
「ちょっとスパイク打ってくれよ、山本の練習だ」
「了解です、虎ー!私の方が得点決めたらアイス奢りね!」
「上等じゃねーか、俺のブロックが多くてもアイスだからな!!」
「望むところよ!クロ先輩やりましょう!」
「おう、研磨。そらの方入ってトスあげてやれ」
「えー…めんどくさい」
ブツブツ文句を言う研磨を押しながら4人でコートに向かった