第10章 猫と梟
それぞれ飲み物をとり、一息つくと光太郎が口を開いた
「そら!!!昨日は悪かった!!!」
「いきなり謝られても心当たりがありすぎて許せないかな」
「んな!?」
「木兎が謝るなんて珍しいじゃねーか」
勢いよく両手を合わせて私にペコペコと謝ってくる光太郎に、音駒側は驚くが赤葦はそんなことなかった。理由を知っているらしい
「ほら…昨日お前ん家行ったじゃん?」
「それはいつもの事でしょ、お母さんも了承済みだし」
「お前の部屋漁ったじゃん?」
「ブハッッ」
「クロ先輩汚いです。あー…別に吃驚しただけだし、もういいよ」
しょぼしょぼと自信ありげな眉を下げ、獰猛な梟を宿した黄色い瞳の視線をチラチラとこちらへ向ける光太郎
これは所謂、『ショボクレモード』一歩手前だ
…下手に機嫌を損ねるのはまずいな。そう思い赤葦の方をチラッと向くと無言で頷かれた
「…光太郎?別に昨日のことはもう怒ってないからそんな落ち込まないでいいよ?」
「俺のこと嫌いになった?」
「なってない!なってない!!昔から光太郎と喧嘩とかしてたけど…嫌いになった事なんてないよ!ね?元気出して?」
すると、ピクッと動く光太郎
あと一押しだ
「光太郎が元気出してくれたら、昨日の事全部忘れるし今度光太郎の家遊びにいくけどなぁ?」
「ホントか!?ヘイヘイヘーイ!」
「木兎さんここ店の中です、うるさいですよ」
「じゃあじゃあ!昨日の下着見ちゃった事も許してくれるよな!なぁ!」
いやー俺それがきがかり?だったんだよー!と、ニコニコと笑う彼に絶句する
なぜならそれを、少なくとも周りの席の知らない人達に聞かれてしまったからだ……最悪だ
「木兎さん!それは言っちゃダメですよって言ったじゃないですか…!!」
「でも許してくれるんだからいいだろー?なぁ?」
「あーあそんなことしちゃったの木兎くんいけないなぁー……で?オススメは?」
「ピンクのレースと白レース」
「ほー可愛いの持ってるのね、そらチャン」
「!」
忘れていた、この大きな黒猫が最高に意地悪だということを。
熱のこもっていた顔にぴしゃりと冷水を浴びた感覚に驚いて黒猫を見上げると、ニヤニヤと意地の悪い顔をしていた
最悪だ!!!