第9章 絆の色
「おーいそらー、そろそろ行くぞー」
遠くから荷物を抱えたクロ先輩に呼ばれ、夕から離れ急いで走る
「悪ぃな、感動のシーン邪魔して」
「べっ別にそんなんじゃないです!…まだ親友って言ってくれたことが嬉しかっただけです」
「そうかそうか、なら笑顔で帰らなきゃな」
「先輩に言われる筋合いなんてない、です!」
ずびっと鼻水をすすると、わしゃわしゃとクロ先輩に頭を撫でられた
それで少し心が落ち着き、安心するのが不服ではあったが何も聞かないクロ先輩は優しかった
その後、音駒と烏野がそれぞれ体育館を出たところで並び挨拶をする
ちょっと大人げない会話もあったり、虎と龍が泣きながら別れを惜しんだりしていたがそれもアリだろう
「そらちゃん」
「清水先輩!!今日はありがとうございました!」
私に近づいて笑いかけてくれた清水先輩にお礼を言うと、それはもう女神のような笑顔を返してくれた
「潔子でいいよ、全国で絶対に会おうね」
「…はい!その時は潔子先輩でも負けません!!」
「!…ふふっ、こっちも負けない」
ふふふっと笑う清水先輩改め、潔子先輩と別れ音駒の方へ歩き出す
どうやらもう出発するらしく、皆烏野に手を振りながら歩きだしていた
「そら!!!」
「?」
大きな声で名前を呼ばれ、振り返る
「また遊びに来いよ!!」
「…うん!!またね!!」
夕にそう言われ、手を振れば龍や翔陽君も大きく手を振って送り出してくれた
やっぱり、宮城はいいところだ
そう思い、もう一度大きく手を振ってから背を向ける
目の前には私の大好きな今の仲間達
「ふふっ」
「どうした?唐突に笑って」
「いーえ!!なんでもないです!」
ああ、ここはなんて温かいのだろうか
一度は夢を諦めた私の手を、掴んで引き上げてくれた
そして、また夢を見せてくれると約束してくれた
その夢を、現実にしてくれると背中で語ってくれた
私を、必要としてくれた
その仲間達と繋がっている絆は、きっと燃えるような赤色なのだろう
その赤色を私は、誇りに思った