第9章 絆の色
体育館へ行くと、片づけをしながら音駒と烏野がそれぞれ話しているようだった
うんうん、いい雰囲気。青春だね
すると、影山君がただならぬ顔で一点を見つめていたので恐る恐るそっちを見ると研磨がいた
必死に顔を背けながら私に助けを求めている彼は、どうやら怖いらしい。確かにあんな顔で見られたら怖い
でもここで私が助けたら影山君、話しかけられないよね…
ごめん研磨、私は影山君を見捨てる訳にもいかないんだ……という念を送り(本人に伝わったかは分からないが)、他の所へと小走りで逃げた
すると、夕が私の方へ駆けてくるのが見えたので足を止める
「お前ん所のリベロ、すげぇな。ウチのエースのボールをあんな綺麗に返す奴そうそういねぇからびびった」
「あぁ夜久先輩?そりゃあそうだよ、レシーブ力が命の音駒でリベロなんだもん。でも夕も凄かったよ」
「…そらも、マネージャー頑張ってるんだな」
「うん、皆はきっと私が見たかった景色を見せてくれるから…頑張りたくなるの」
「俺、お前がスパイクを決めた時の顔が一番好きだった」
「え!?突然なによ」
突然、真剣な顔で私の事を話す夕につい顔に熱が集まる
もちろん、彼にそんな気はないのが分かっていてもだ
驚く私を無視し、夕は話を続ける
「でも今日見て分かった。お前は自分の好きなバレーを見てる時の顔の方がいい顔してる…マネージャー、頑張れよ」
「!!」
夕はそう言うと、まぁ全国で会ったら負けねぇけどな!なんて笑った
私は素直に嬉しかった。きっと彼は、私が約束を破った事を許しきれないのではないかと思っていた
でも、違った
彼は、西谷夕は、私が思っていた以上に器の大きい男だった
そんな彼が私を親友と呼んでくれたことが嬉しかったし、誇らしかった
「うん……!!」
少し視界が潤む中、返事をして笑う
彼も嬉しそうに笑ったことがまた嬉しくて、昔のように抱き着いてしまう
私より少しだけ小さい彼は、私の勢いを受け止めてくれた
いつもそう、試合で負けて慰めてくれたとき、勝って喜びを分かち合うとき、いつも私達は思いきり感情をお互いにぶつけた
少しだけ、中学時代に戻れた気がした