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【HQ】 羽の堕ちた鳥の生き方

第3章 昔と今の狭間で






「いってきまーす」




共働きで誰もいない家に挨拶をし、鍵を閉めて家を出る



桜も満開を過ぎ、いつの間にか少しではあるが葉が付き始めているようだ



近所の桜並木を自転車で走り抜け、少しすれば私の通っている学校である音駒高校に到着する




まだ朝早い時間のため、人はあまりいないようだった



急いで自転車置き場に行った後、荷物を持って体育館へと走る


その途中にある部室に寄り、軽く部屋の掃除をしてから救急鞄を持ち再び体育館へと向かう





「一番乗りだーい!」



そう叫びながら体育館へと入り、深呼吸をする

色んな人が使い込んだ匂い……これこそ体育館の匂い


急いで支柱とネット、そしてボールカゴとボールを準備する


朝だからドリンクはいいだろう……なんていう怠慢な考えで、毎朝ドリンクの準備はしない


救急鞄をコートの端に置き、準備を終えるとまた深呼吸





「…よし!」




パチンッと頬を叩いてボールを取り出す




コートのエンドラインから見る景色はいつも美しい


たった数十メートルのコートの中に、様々なドラマが生まれるのだ



ボールをクルクルと手の中で回転させ、キュッと止める




「フーッ」



息を思いきり吐いて体から余分な力を抜く


ボールを高く上げ、思いきり跳ぶ



ここ!!と思った瞬間に腕を振り下ろす





そうやって放たれたボールは、ネットの向こう側の白線ギリギリにダンッと勢いよく落ちていった






「んー!気持ちいい!!」






そう叫ぶと、遠くから複数の足音が聞こえてくる





急いで自分で放ったボールを回収し、何事もなかったかのように片づける



ガラッと体育館の扉が開くと、赤いジャージを着た皆が丁度歩いてきていた





「おはよー!!」

「おう、相変わらず朝から元気だな」

「えへへ、元気なのが取り柄ですから」



夜久先輩の爽やかな挨拶に、少し照れながらはにかむと他の人達も挨拶を返してくれた




「今日も頼んだぞ、マネージャー」

「…任せてください!クロ先輩!!」






クロ先輩から毎日もらうその言葉に元気に頷く






私は高校に入って、選手をやめたのだ
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