第2章 思い出
バレーボール
漢字で書くと、排球と書くこのスポーツ
その名のとおり、ネットの向こうに球を排除する球技である
私はこのスポーツが大好きだ
「私が打つ!!!」
「そら!」
ボールを呼び、ネットすれすれまで走り跳び上がる
仲間から飛んでくる打ちやすいボールに右の手のひらを合わせ、思いきり腕を振り下ろす
バシュッと心地の良い音と、ボールが勢いよくネットの向こう側の白線の内側に落ちる感覚
そして何より、跳び上がったときにだけ見えるこの景色
コートで誰よりも高く、高く跳んだときにだけ見えるこの景色が私は好きだった
ドッと勢いを殺して相手からのスパイクを取るこの瞬間
「そらナイスレシーブ!!」
相手が絶対にとれないだろうと思っているスパイクを拾ったときの驚いた顔が大好きだった
「ナイッサー!!」
自分ひとりで打ち込んだボールが、相手のコートに落ちるのが楽しくて仕方なかった
「一本とってこー!!」
皆で一つのボールを巡って争うのが、面白くて仕方なかった
ピピーッ
笛が鳴ると、その場に居合わせた誰もが歓声をあげる
力を出し切った後の歓声は、私の体の疲れを吹き飛ばしてくれた
「ベストスパイカー賞、おめでとう!」
「ありがとうございます!」
ピカピカに輝いている楯を両手に持ち、笑顔で答えれば仲間から名前を呼ばれ喜ばれる
特に声がでかいアイツを見れば、ニカッと太陽のような笑顔を向けられた
負けじと笑顔を返せば、その笑顔を写真に収められた
嗚呼、なんてこのスポーツは楽しいのだろう
だからこそだ
「もっと、やりたかったなぁ」
これからあの舞台に立てない……そう思えば思うほど
「もっと挑戦したいことあったのになぁ」
やりたかった連携や速攻、こんな打ち方できたらかっこいいのに……と思えば思うほど
「もっと……飛びたかったなぁ……っ」
もうあの、大好きな景色を見る事ができないのだと思うと
目から涙が溢れてくるのだ