第8章 雛烏への恐怖
清水先輩も彼の声を聞いて笑いながら私を送り出してくれた
私は、ご飯を急いで食べ終えゴミを片づけ午後の準備をしてからコートへ向かった
「早くやろうぜ!柔軟はしたか!?」
「まだだよ、手伝ってくれない?」
「あぁいいぜ!お前のサーブまた拾いたくて急いで飯食っちまった!」
「ふふ、そんな急いだら後でお腹痛くなるよ」
そんな他愛のない話をしながら、柔軟をする
ちょっと硬くなったか?なんて言われてしまいショックを受けたが、ボールをもってお互いに準備完了だ
「行くよー?」
「おうよ!!全力でこーい!!」
ネットを挟んだ向こう側にいる夕は、本当にさっきまで試合をしていたのか?と疑いたくなるほど元気だ
そんな彼を見て笑い、ボールを天へと放つ
この高さ
このタイミング
この瞬間!!というところで手のひらをボールに叩きつけ、ネットの向こうへと送り出す
男子ほどの威力も、スピードも持ち合わせていないけど
このテクニックなら、私は男子にも引けを取らないと自負している
夕がボールを拾おうとする瞬間に曲がる、得意のコース
「うおっ…」
彼は曲がるボールに咄嗟に体を傾けながら対応し、倒れる
しかし、ボールはちゃんとセッターの位置に返した…私の負けだ
彼は、私がバレーを辞めてからもひたすらボールを拾い続けたのだろう
今まではセッターに返すまではいかないサーブだったのに…
夕の努力が、ひしひしと伝わってくるレシーブだった
あれから数本やり、ネットに近づいて感想を言い合う
「相変わらずいいサーブだな!俺が知ってる女子プレイヤーでそらが一番だ!!」
「はは、夕に言われると自信つくなぁ。夕もすごくレシーブ上手くなったよね、中学まではとれなかったのに」
「俺だって成長してるからな!!今ならお前のブロックフォローだってやれるぜ!」
えっへん、と私より少し大きいからだを大きくして自慢する彼は、今の実力に満足なんてこれっぽっちもしていない
彼はいつも、どうしたらもっと上手になれるのかだけを考えているのだ
すると、夕の後ろからパタパタとオレンジ頭が走ってきた