第8章 雛烏への恐怖
あれから少しして、2セット先取し私達音駒が勝利した
「もう一回!!」
そう叫ぶ翔陽君に、猫又監督が嬉しそうに笑う
「おう、そのつもりだ!!だがその前に昼飯にせんとな!」
朝に会ったはずの私達だが、既に太陽は上にいる
早めに昼食をとって休憩し、午後にまた試合をしようと監督が提案すると"飯だぁぁぁ!!!"と数人が叫びながら体育館の外へと走っていった
音駒の皆は、荷物置き場に集合して私の事を待っていたようだ
「昼ごはんの用意しておくので早く手洗って汗も拭いてきてください!」
「「あース」」
疲れて気の抜けた返事をしながら水道に向かう皆を見て、あらかじめ用意しておいた昼ごはんをタッパーから出していく
さながら運動会のようだな…と思いながら並べ終わると、皆がお腹を空かせて戻ってきた
私も手を洗いに行き、戻ってくると既に戦争状態だ
「ほら、そらちゃんの分」
「海先輩…!!ありがとうございます!」
まるで菩薩のような後光が射しているように見えた海先輩から、私の分をキープしてくれたお皿を貰う
流石に戦争状態の中で食べる訳にもいかず、どうしようとウロウロしていると清水先輩に声をかけられた
「ふふ、あっちじゃ食べにくいもんね」
「そうなんです…自分の分取られそうで」
「ウチもそんな感じだよ、だから私も逃げてきちゃった」
悪戯っ子のような微笑みでわいわいと騒がしい烏野の方を見る清水先輩は本当に美しい。横にいていいのか私
「西谷と知り合いなんだってね」
「あぁ小3から中3まで学校が同じだったんです。転校してきた日に仲良くなって」
「へぇ、西谷らしいね」
「本当にうるさくて元気で、なのにバレーは静か…そんなプレーに惹かれて一緒に練習してたんです」
「そうだったんだ。西谷も嬉しそうだったよ。久しぶりに親友に会えたーって」
「夕らしいですね」
共通の話題がバレーと夕しかない私達だったが、清水先輩が優しく私と夕の思い出話を聞いてくれたのもあり楽しく食事ができた
「おーいそら!!サーブ打ってくれよー!!」
昔のように、アイツに呼ばれた