第8章 雛烏への恐怖
虎のサーブから始まった次のプレーは、相手のエースにスパイクを打たせてしまう
相変わらずの威力だが、レシーブ力の高い音駒でリベロにいる夜久先輩には取れる
先輩は、完全に勢いを殺して研磨の元へとボールを返した
「夜久先輩ナイスレシーブ!!」
そしてクロ先輩はまた跳び上がろうと構える
相手ブロックもそれを見てAクイックだと思ったのだろう
しかし、クロ先輩の武器はそれだけではない
ピタッとジャンプモーションから一瞬止まり、跳び上がる
その一瞬でブロックはてっぺんから既に落ちている――つまり、ブロックがフれたのだ
"一人時間差"
最近はメジャーではない攻撃な上、何回も使う事のできない簡単そうで難しい技
他にもいろんな技を小さいころから練習してきたクロ先輩
そしてそれをここという場面で活かす研磨
これが、ウチの名コンビだ
完璧なAクイックの後にあれを入れてくる辺りは、流石としか言いようがないだろう
これで、相手も多少ひるむはずだ
現在の得点、20対16
烏養監督は、やはり焦っているらしくそわそわとしているのが視界の隅に映る
「ふほほ…青いな烏養孫、焦りがダダ漏れじゃねーか」
そう言いながらニヤニヤと烏養監督を見る猫又監督は、心底楽しそうだ
こっちの雰囲気に呑まれるか?とおもっていたとき
「パワーとスピードでガンガン攻めろ!!」
「力でねじ伏せろって事だなァ!?」
「へたくそな速攻もレシーブもそこを力技でなんとかする、粗削りで、不格好な今のお前らの武器だ!!今のありったけの武器で攻めまくれ!!」
そう叫ぶ監督に、烏野は一気に士気を上げてきた
「あーくそ、こっちの雰囲気に呑まれてくれたと思ったのになぁ」
「はは…ノせると厄介な相手ですね、烏野」
「全くだ」
安定した音駒とは違い、120%の力を急に出すことのできる成長途中の烏野
いいライバルとは、このことなんだろう