第7章 烏の飛び方
あれから、長身MBを研磨が視線のフェイントをかけてかわしたりしているうちに同点へと追いついた
現在の得点、18対18
音駒はとにかくレシーブに力を入れている
マネージャーの私までスパイクやサーブを打たされるくらいだ、そりゃあもう見る度に体育館の床に飛び込んでいる
だからこそ、研磨は動かないでいいのだ
ちゃんと研磨の元へボールが渡るから
だから、彼は冷静に敵の分析ができる
しかし、同点になった理由はそれだけではない
翔陽君の超人速攻が決まらなくなってきたのだ
犬岡君がワンタッチして、浮いたボールを夜久先輩達がフォローする
すると、どうしてもセッターは他にボールを回さなければならなくなるが、普通の速攻への対処はウチの方が上だ
「超人みたいなエースが居なくても、地道に、丁寧に、一点一点を積み重ねて行けば……」
猫又監督がそう呟く中、音駒のマッチポイントを迎える
翔陽君の超人速攻を目で追いながら、研磨の言葉を思い出す
―最初クリアできそうにないゲームでも、何回も繰り返すうちに慣れるんだよ――
「やっと捕まえた!!!」
そう嬉しそうに叫ぶ犬岡君の声と共に、第一セットが終了した
「犬岡くーん!ナイスブロックだったよ!!」
「あざッス!!」
「研磨もナイスフェイント!かっこよかったよー!」
「あ、ありがと」
きゃっきゃとドリンクとタオルを渡しながら声をかけて回る
「そら、俺は?」
「クロ先輩はー…うーん特には」
「ひどくねぇ!?」
「日頃の行いじゃないですかね!海先輩ナイスフォローでしたー!」
クロ先輩への雑な対応もそこそこに、他の選手にも声をかける
犬岡君でさえだいぶかかった超人速攻の攻略
クロ先輩達が前のときは多分セッター君がたくさん使ってくるだろう
第二セット、烏野はどうでるのか…
楽しみだ